ギグセールスはBtoB SaaS企業様を中心に新規開拓の悩み(マーケティングやセールス課題)を解決している会社ですが、人員増加にも伴い、今回初めての試みとして株式会社ユーザベース・FORCAS事業部執行役員の吉田さんをお招きしてマーケティングやセールス活動の在り方についてディスカッションの機会を頂きました。
『SaaS』界隈で最先端を走り続ける企業様に貴重なお時間を頂きましたので、どのようにしてABM(Account Based Marketing)の啓蒙啓発に取り組んだのか、チームの生産性向上やビジネス成長の裏側にはどんな取り組みがあったのか、具体的な取り組み内容や吉田さんの経験事例を元にご説明して頂きましたので今回はその一部をお届けします。
◆吉田さんの経歴
2010年株式会社サイバーエージェントへ新卒入社。インターネット広告事業本部に配属。4年目に、マネージャーに昇格。その後リスティング市場の新規開拓組織の立ち上げを機に異動。
2017年に株式会社COMPASSに転職。法人事業部の立ち上げを行い、法人事業部部長に就任。同年に執行役員に昇格。学習塾~学校法人マーケットへのデジタル教材の拡販や、大手予備校との共同開発プロジェクトをリード。2020年3月よりFORCASへ参画し、2020年7月よりSalesチームのリーダー。2021年7月より株式会社ユーザベース FORCAS事業 執行役員コマーシャル担当としてSMB/MM領域を管掌。
◆今でこそ『ABM』といったワードや認知は広まってきたかと思いますが、ABMという概念やサービスの啓蒙啓発に注力した事を教えてください
・『ABM』って何?これをテーマにセミナーで啓蒙啓発→商談や受注に中々つながらなかった…
最初はシンプルに『ABM』って何?というテーマでオフラインイベントも注力していたのですが「既に知っている人」「筋のいいマーケター」など、かなり狭い範囲にしか届かなかったんです。
結果的に商談は一部発生したのですが、中々受注が生まれなくて。
1人の営業が何商談もしても全く受注無しといったケースも全然ありました。
「ABM!」と発信しても、本質的な課題解決案が深くまで届かなかったので入り口の『伝え方』から変更しようと。
・要因分析からリトライした取り組み
ABMというワード訴求というよりは、先ずは根本的に顧客が何を求めているのか深く知り、それを洗い出して伝える準備をしました。
知らない人に何か新たな事(サービスや概念)を伝えるという点において、抱えている課題や潜在的ニーズを明らかにする、そしてそれを解決できますよといった順序で伝えていかないといけなかったんですよね。
当たり前の事ではあるのですが、原理原則は誰に対して何を訴求するのか。
その為にも先ずは自分達でターゲット分析を行った結果、当時はSaaSと人材に相性が良くて、他の業種と比べて受注率が10倍くらい違ったんですね。
例えばSaaS企業様に話を聞いていくと、分業体制を敷いていて、リードが潤沢に入ってきて、その中で更に狙いたい業態にアプローチがしたいという声が多かったんです。
ターゲットを可視化して、そこにリソースを集中するなどしないと生産性が上がらない、だけどどうしたらいいかわからない…
顧客の求めている事を深く探っていく中でこういった課題が多く集まってきました。
こうして洗い出していく中で「効率よくターゲットを抽出してアプローチ出来たら生産性上がらないですか?」こうした取り組みから顧客に提案して、実際に気づいて頂いて、同時に受注も増えてきました。
後付けにはなるんですけど、これがABMという概念なんですよと説明も付け加えさせて頂いて『ABM』の概念と同時に『FORCAS』というブランドイメージも認知されてきたと感じています。
ギグセールスさんも『BDR』や『アウトバウンド』の啓蒙啓発をしていると思うのですが、こういった積み重ねで更にブランドイメージもついていくんじゃないかなと思っています。
◆顧客の課題把握とニーズを高める取り組みをしたとありましたが、そこから更に受注率の改善に取り組んだ事はありますか?
これはかなり試行錯誤してやっていたし、今も常に考え続けているところではあるのですが、幾つか取り組んだ事をお伝えしますね。
全体感の部分でお伝えすると、僕らイネーブルメントを凄い大切にしていて、データドリブンに沿って育成を行っているんですね。
具体的にいうとトッププレイヤーの受注した行動を全てSalesforce上でトラッキングして、それによって受注にどういった相関性があるのか分析していきました。
取り組み結果からお伝えすると、昨年後半かなり改善に力を入れて分析からイネーブルメントに落とし込んだ結果、案件化からの受注率が150%近く改善しました。
分析の中身なんですけど、大前提ヒアリング項目を型化して先ずはそのフォーマットに沿って各プレイヤーに商談へ臨んでもらいました。
これも基本の話ではあるんですけど「初回商談で決裁者の意向を確認したか」という部分はかなり重要だと定義付けしていて、先ずはインサイドセールスに必ず決裁者の同席を促してもらう事に力を入れました。
とは言え、決裁者が毎回同席するわけでもないので、その際の初回商談において
「〇〇様はいいと思って頂いたと思うのですが決裁者の方はこの話知っているのか」「こういったプロジェクトにおいてツールを導入する予算に合意しているのか」
このようにどのような糸口でもいいので決裁者の意向を確認するようにしたんですね。
先方の意向がふわっとしている時は「〇〇様はいいと思っているのであれば次回までに決裁者様の意向を確認してください。導入したいのであれば僕と一緒に納得してもらえるようにアプローチしていきましょう」これぐらい結構しっかり伝えていますね。でもこれが凄い大事です。
整理すると、対面者とのゴール・問題・課題を常に把握してお客様側の意向を高められているのか、意向が高められているのであれば先方の決済プロセスの確認、そして拒否権のある人の確認など不となり得る部分を全て潰せているのかという事をモニタリングしていくといった形を取っています。
これらを営業マネージャーがSalesforceを見ながらチェック項目の確認を行い、出来ていないのであれば次はどうやって確認していくのかを徹底してディスカッションする事でマネジメントの品質もコントロールしています。
今お伝えしてわかるように、一見基本のような事なんですけど僕らは「型」を大事にしていて、取れる案件を落とさない方が大事だと思っていますし、それだけで受注率とかってだいぶ改善してくるんですよ。
◆これらを把握していく為にはコミュニケーション粒度が重要になってくると思うのですが、優れたセールスの性質はありますか?
明確で、「とにかくディスカッションが上手い人ですね」
具体的なケースだと、なぜ今回この商談に参加頂けたのかみたいなところから聞いていったりするんですけど「お客様側が言葉にしたいけどうまく出来ていないケースって結構多かったりして」ふわっとしている部分をヒアリングしながら紐解いていくんですね。
そうすると先方の課題が徐々に浮き彫りになってきて、このソリューションだとこういった悩みが解決できると思うんですよねといった具体的な提案ができるようになるんですよ。
これに改めて気付いたのも、トッププレイヤーの録画を全部チェックして同席もして深くインタビューも行ったんです。
「なんでそんな受注できるの?」って(笑)
一緒に動画も見ながら紐解いていくと、明らかに他のメンバーと違うのがこの「ディスカッション」の部分だったんですよ。
それを更に細分化して、型化する事で他のメンバーにも落とし込んでいった結果が先程お話しした受注率の改善につながりました。
なので現時点だとこのディスカッション能力というのはかなり受注率を上げていく上での貴重なテーマだと確信しています。
◆トッププレイヤー以外に伝える時に意識したポイントとは?
結論、まだまだ悩み続けている最中ではあるんですけど、インストールしやすいような「型」にする事は気をつけています。
例えば先程お伝えした「決裁者の確認をした?」など、Yes or Noで答えやすい項目設定にするなどです。これだとインストールしやすいんですよ。
一方で、重要だと言ったセールスの「ディスカッション能力」ってYes or Noじゃないので難しいんですよ。
だいぶ難しいテーマなので、それを伝える為に本当に沢山の方からお話も聞いて、ロープレもやったりとかは勿論しているんですけど、結局行き着いて自分達が現在好んでやっているのは「なんでディスカッションが大事なのか?徹底的にこの背景を深く理解してもらう事」です。
具体的なHowのテンプレ化は難しいので、なるべくケーススタディでよくある事例の型化やトッププレイヤーの動画を見てどういったコミュニケーションがいいのか、そのコミュニケーションをとった時にどういった反応があればいいのか、こういったところから徹底的に理解してもらっています。
そこからはチャレンジ精神でテーマを持って商談には臨んでもらって、後から動画の振り返りを僕やマネージャーと行ってフィードバックやセルフマネジメントもしてもらっているんです。
何かスクリプトを作成して解決する問題でもないので、徹底的なセルフマネジメントとそれに対するフィードバックサイクルを繰り返すというところを意識していますかね。
「泥臭いですがひたすら繰り返す」今のところこれが確からしい方法なのかなと僕は思っていて、時間がかかりますけど一緒にプレイヤーと取り組んでいるところですね。
本当にここは難しいですよね(笑)
◆本記事のまとめ
今回はセールス活動やそれに伴う組織の型化など、貴重な実体験を元にしてディスカッション形式でお話して頂きました。
ギグセールスではPJ支援の企業様数が増え、毎月メンバーの増員がある背景からも、型化することによる全体レベルの引き上げや属人化を防ぐ体制作りは重要度が高く、様々なヒントや解像度の高いお話もして頂き非常に参考となる内容でした。
効率化が重要な一方で、裏側には質を改善していくための「圧倒的な分析(量)」がある事も改めての学びになり背筋が伸びた次第です。
本記事は勉強会の一部抜粋となりますが、新規事業の立ち上げからCSのフォロー体制など様々な項目に対してもお話頂いております。
今回は吉田さんの講習内容がメインの記事となっていますので、今後は実際にギグセールスとして行ってみての成果や気づきの振り返りなどもこちらのコンテンツで発信していきたいと考えています。
ユーザベース様、吉田様、この度は貴重なお時間を頂き誠にありがとうございました!