昨今、インサイドセールスという役割が注目を浴び、多くの企業が導入を進めています。インサイドセールスが注目を集めるとともに「BDR」という営業手法がこれまでよりもさらに重要視されています。
本記事では、「BDR」について基本的な知識から、その役割、進め方まで徹底解説します。
目次
BDRとは
BDRとは「Bussines Development Representative」の頭文字を取った名称です。LTVが高いターゲット企業に対し、メールや電話、SNS、その他様々なオフライン施策など、様々な手法を駆使して、能動的にアプローチをすることで顧客開拓を行います。
ターゲットは大企業などいわゆるエンタープライズ企業です。エンタープライズ企業に、能動的にアプローチをかけることで自社サービスと相性がよく、LTVが大きい企業を開拓することを目指します。
BDRとSDRとの違い
営業手法にはBDRの他にSDRというものがあります。どちらも新規開拓を目指したものには変わりませんが、役割が明確に異なります。
SDRの役割
SDRは、自社から能動的にアプローチを行うのではなく、広告など主にマーケティングチームが創出したリードに対してアプローチを行うことで商談を創出します。
特徴としては、お問い合わせや資料請求など、商談相手がすでに課題を認識し、能動的にアクションを起こしている場合がほとんどです。よって、リードタイムが短くなったり、比較的温度感の高い商談が多くなります。
一方、ピンポイントでターゲット企業を狙い撃ちにすることはできないため、自社サービスと相性の良い企業ばかりと商談することはできません。そのため、案件規模が小さいことが多い、という側面もあります。
また、過去失注した企業や、休眠となっている顧客の掘り起こしもSDRの重要な役割です。
BDRの役割
BDRはターゲット企業を明確にし、エンタープライズの新規開拓を目指し、アウトバウンドを主体にアプローチを行います。
SDRと同様、新規顧客の獲得を目指すことに違いはありませんが、リードタイムが長くなる傾向があります。SDRと異なるのは、まだターゲット企業が強い課題感を持っているケースが少なく、実際に検討されるまでに時間がかかるという点です。また、BDRのターゲットとなるエンタープライズは意思決定までのプロセスが複雑だったり、そもそも意思決定者にたどり着くまでに時間がかかるケースがほとんどです。
その一方で成約時の金額や、その後のLTVは大きくなります。商談設定や成約までの難易度は非常に高いものの、その見返りは大きくなります。
BDRが重要な理由
BDRが重要な理由は「エンタープライズ戦略」の重要性と、「WEBマーケティングの激化」にあります。
まずはエンタープライズ戦略の重要性から解説していきます。
エンタープライズ戦略が重要な理由
エンタープライズ戦略が重要な理由は3つあります。
- 顧客単価が高い
- チャーンレートが抑制できる
- キャッシュフローが安定する
一つずつ解説していきます。
顧客単価が高い
中小企業庁「2019年版中小企業白書」によると、日本企業のうちいわゆるエンタープライズは0.3%、SMB企業が99.7%。一方で売上の総額に関しては、0.3%しかない大手企業が約半数をしめています。
エンタープライズを開拓することは、顧客単価が高い顧客を獲得ことに繋がります。
チャーンレートが抑制できる
チャーンレートの抑制は、LTVを最大化させるために重要です。SMB企業はエンタープライズと比較するとチャーンレートが高くLTVが大きくなりにくい場合が多いです。
キャッシュフローが安定する
エンタープライズは、売り上げが安定しているため取引単価が高いだけでなく、その後のチャーンレートもSMB企業と比較して低い傾向にあります。
エンタープライズ開拓を行うことで、安定的な大口顧客を獲得することができ、経営を安定させることに繋がります。
次は「WEBマーケティングの大衆化」について解説します。
WEBマーケティングの激化
近年、WEBマーケティングの重要性が唱えられ続けてきました。特にコロナ禍以降、顧客の購買行動は大きく変化しています。
かつては「モノは営業から買う」ということが主流でしたが、今はでは営業担当者に会うまでに購買プロセスの半分以上が終了していると言われています。このため、企業はWEBマーケティングに取り組むことで、検討段階から自社のサービスを認識してもらうことを目指します。
BDRは、WEBマーケティングよりも早く顧客にリーチすることができることが特徴です。顧客の導入検討のスタートよりも前にアプローチを行うことで、自社サービスを認知してもらうことができます。このため、WEBマーケティングでは獲得できない層を獲得することができます。
BDRのメリット
BDRのメリットは下記となります。
- アプローチ先を選べる
- 顧客の検討の早い段階でアプローチができる
- セールスチームの生産性が上がる
アプローチ先を選べる
BDRの最大のメリットはアプローチ先を選べることです。自社サービスと相性の良い企業を開拓することで売上の最大化ができます。エンタープライズに限らず、売上が最大化する企業を狙い撃ちにすることができます。
顧客の検討の早い段階でアプローチができる
BtoBにおいては、約3分の2がサービス検討を3つ以内に絞っていると言われています。そのため、検討の早い段階でその3つに入ることができなければ、そもそも検討すらされないということです。
BDRは、顧客の検討の早い段階でアプローチを行い、早期に認知を獲得できるため、この3つの選択肢に入りやすいということができます。
セールスチームの生産性が上がる
BDRは自社サービスと相性のいい顧客の発掘を目的としているため、受注率がよかったり、受注金額が大きい傾向があります。一方でSDRは受注金額が小さい傾向にあるため、同じ労力でもBDRの方が生産性がよく、効率的ということができます。
BDRのデメリット
これまでBDRのメリットを見てきましたが、デメリットについても解説します。下記がBDRのデメリットです。
- 従業員のエンゲージメントが下がる
- リードタイムが長い
従業員のエンゲージメントが下がる
BDRは未接点の企業を開拓するため、SDRと比較して難易度が高いです。時には全く成果のでない場合もあります。さらに接点のないキーマンに突然営業をすることで思わぬお叱りを受けるということも珍しいことではありません。
こういったことからBDRチームのエンゲージメントの低下や、離職率が上がってしまうということが考えられます。そのため、BDRの業務の一部を外部に委託しているという会社は少なくないでしょう。
リードタイムが長い
BDRは潜在層の開拓、さらにはエンタープライズの開拓を目的とした施策のため、リードタイムが長くなる傾向があります。潜在層はいうまでもありませんが、エンタープライズも決裁フローが複雑で、リードタイムが長くなる傾向があります。
BDRを始めるタイミング
BDRを始めると効果的なタイミングはいくつかありますので解説していきます。
マーケティングをやり切った時
CPAやCACは、いくら改善を重ねても一定以下になることはありません。マーケティングに取り組み続け獲得できる顧客層が限られてきた時は、まさにBDRに取り組むべきタイミングです。これまでマーケティングでは獲得することができなかった、LTVが最大化する企業を狙い撃ちにすることでさらに事業成長を加速することができます。
大手企業が新規事業をスタートさせた時
事業を新しく作った時、市場での競争力は決してないはずです。そんな時はBDRで他社よりも先に認知を獲得することで事業を急成長させることができます。
ただし、BDRはリードタイムがかかるので、キャッシュフローがすでに安定している必要があります。
ターゲットが明確な時
自社サービスのターゲットが明確な時はBDRでの顧客開拓がおすすめです。マーケティングではどれだけターゲットに向けた訴求を行なっても、特定のターゲットを獲得することは難しいです。そのため、アプローチ先を選べるというBDRの強みを最大限生かすことができます。
次はBDRの成功事例についてご紹介します。
BDRの成功事例
BDRに実際に取り組み、成功された企業の事例を紹介します。
・コニカミノルタジャパン株式会社
大企業で新規事業を成功させる方法とは
・株式会社ユーザベース
BDR成功のカギとは?〜取り組みへの柔軟さと環境変化の対応〜
・株式会社Shippio
バーティカルSaaS×BDRを成功させる″ワンチーム″での伴走支援
BDRの効果を高めるABM戦略
ABMとBDRは切り離すことができないものです。
ABMとはAccount Based Marketing(アカウント・ベースド・マーケティング)の略で、具体的な企業をターゲットとして設定し、ターゲットからの売上を最大化するために戦略的にアプローチするという考え方または手法です。
BDRは自社サービスと相性がよい企業をターゲットとしてアプローチを行う手法です。ABMの考え方は実際にBDRのアプローチを行う前に必ず必要です。そこで、BDRの成果を高めるABM戦略についても少し解説します。
LTVの高い顧客をセグメントする
BDRの成果を高めるためにまずは、LTVの高い顧客の属性を特定し、セグメントします。方法としては下記のようなものがあります。
- MAツールやCRMを活用して既存顧客の分析をする
- LTVの高い既存顧客の企業規模、属性、従業員数などを分析する
- ABMツールなどで企業の利用サービスなどを分析する
こういった手法でセグメントを作成し、ターゲットとなるリストを作成します。
One to Oneキャンペーンを行う
One-to-Oneキャンペーンは、ターゲット企業に対して、個別に設計されたアプローチを展開する戦略です。
- ターゲットとなる企業の事業や人材、戦略、投資に関する情報を収集する
- ターゲットのなる企業の人物を特定し、情報を収集する
- ターゲット企業のキーマンに対して、最適なタイミング、最適な媒体でアプローチをする
One-to-Oneキャンペーンは、ターゲット企業との深い関係構築やニーズへの適切な対応を通じて、ABM戦略の効果を最大化するための重要な手法の一つです。
次は実際にBDRに取り組む手順について解説します。
BDRの進め方
BDRの進め方は以下の通りです。
KPI設定と戦略立案
BDRの目標を明確にし、戦略を立案します。KPIは、リード獲得数やアポ獲得数だけでなく、その後の取引金額の大きさなども重要な目標となります。
ターゲットの設定
KPIと戦略が決まれば、次はABM戦略を用いてターゲットを特定、リスト化します。
ターゲット企業、キーマンの調査
ターゲット企業とそのキーマンに関する情報収集を行います。これは企業のIR情報やプレスリリース、導入記事インタビューや、キーマンのSNSなどを活用します。
アプローチの開始
ここまでのプロセスが完了したら、実際にアプローチを開始します。コールやメール、SNS、手紙などさまざまな手段を用い、個人に最適な手段でアプローチを行うことで接続率が向上します。
まとめ
今回は、BDRの役割や成功のポイント、メリット・デメリットについて解説をしました。
BDRは、エンタープライズを中心としたターゲット企業を開拓するのに有効な手法です。成功すれば自社の売り上げの拡大など数多くのメリットがあります。
一方で、その難易度の高さから実施を断念したり、従業員の退職につながるということもあります。
そんな時はぜひBDRの取り組みそのものを外注するということも選択肢の一つかもしれません。