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【米国企業が注目】セールスイネーブルメント(Sales Enablement)とはなにか?

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セールスは、日本語で営業や営業活動のことを指します。

みなさんご存知の通り、営業活動とは基本的には人同士の交渉であり、今までは細かなテクニックの変化はあれどそれをより戦略的に、かつ科学的に進めようとする大きな動きは少なかったと言えます。

しかし、それはセールスイネーブルメントという概念の台頭によって大きく変化しようとしています。近年では、日本でもこのセールスイネーブルメント(Sales Enablement)に関するレポートや書籍の出版などの動きが加速しており、今後は人々の関心が高まっていくのではないかと予想されます。

今回は、そのセールスイネーブルメントとはどういった概念なのか、なぜ注目されているのかなどを中心に解説していきます。

Sales Enablementについて

セールスイネーブルメントという概念は、継続的に売り上げを伸ばしていくために、営業活動を効率化する仕組み作りとその教育のことです。

少し難しくなってしまいましたね。もう少し噛み砕いて説明すると、営業マンが案件を取るための情報やテクニックなどをまとめ、それを研修などを通じて共有していくことがセールスイネーブルメントということです。

セールスイネーブルメントという概念の起源は、1999年まで遡ります。アメリカのMiller Brewing Companyという会社でブランドマネージャーをしていたJohn Aiello氏とコンサルタントだったDrew Larsen氏が当時の営業活動への課題点を解決しようとした結果、セールスイネーブルメントと言う概念が生まれました。

彼らが直面していた課題は以下のようなものでした。

  • マーケティング部門と営業部門の間のコミュニケーション不足による不完全、かつ一貫性のないブランドメッセージ
  • 顧客や商品に関する情報の不足
  • 再現性の低い営業活動の数々

つまり、セールスイネーブルメントは以下のようなことを目指していると言えます。

  • マーケティング部門と営業部門間での円滑なコミュニケーションによる営業活動の効率化
  • 顧客情報の共有、自社商品への理解の深化を通じた顧客のニーズにより細やかにコミットすること
  • 営業の「型」を作ることで、営業活動の属人化の低減と新人教育の質と効率の向上

具体的なセールスイネーブルメントの内容としては、営業活動に必要な情報を整理し、それを営業部門全体で共有することが挙げられます。

また、マーケティング部門とのコミュニケーションを行い、ブランディングや商品説明において歩調を合わせるために調整するなども一例ですね。

他にも、各営業マンの活動や成果を数値化するなどして誰が、なぜ、成果を上げられているのかということを分析し、それを研修などで他の営業マンも実践できるようにすることなどが挙げられるでしょう。

Sales Enablementがなぜ注目されているのか

アメリカ

アメリカはセールスイネーブルメントの起源の地ではありますが、セールスイネーブルメントが注目され始めたのは2017年ごろと意外と最近のようです。

アメリカが成果主義なのは多くの人が認めるところだと思いますが、アメリカでセールスイネーブルメントが注目されつつあるのはその成果主義が関係していると言えるでしょう。

つまり、営業活動という属人化しやすい業務から属人的な要素を排除し、標準化を進めることで、数字などを用いた科学的管理を可能にし、成果などを可視化できると同時に、成果を高める方法なども分析しやすくなるということで注目を集めているのです。

今までは、標準化などを進めたとしても、成果などを数値化し、それを分析することなどは難しかったのですが、最近はCRMツールの発達などによりデータの分析などが容易になったことで、セールスイネーブルメントを実践することが容易になったことも注目されている理由としてあげることができるしょう。

日本

日本においても、注目される理由はアメリカと似ています。

つまり、営業活動を科学的に管理できるようになることで、個々人の営業活動の分析や、各営業マンの成功の秘訣を部署全体に共有し、チーム全体の生産性向上に繋げることができるという点です。

特に日本においては今後少子高齢化が進み、人口減が必然と言われていますので、企業側も人手不足に備える必要があります。

これは、今後各業務における生産性を高め、より少ない人数で今まで以上の売り上げを出す必要があるということを意味しています。もちろん、営業部門も例外ではありません。

しかし、安心してください。セールスイネーブルメントに取り組むことで、営業の成功のプロセスを社内で共有し、確実に生産性の向上へと繋げていくことができます。

日本企業こそセールスイネーブルメントの促進が必要なのではないかということに多少なりとも共感していただけたでしょうか?

Sales EnablementとSales Opsとの違い

Sales Opsとは、Sales Operationsの略です。

営業関連の言葉で、売り上げを継続的に伸ばしていくために戦略を練ったり、営業をより効率化するための分析やマーケットの予測などを行う組織や活動のことを指しています。

営業活動の司令塔というイメージですね。詳しくは、Sales Opsを紹介した記事がありますので、そちらをお読みください。

ここまで聞くと、Sales OpsとSales Enablementがかなり似ていると思った方もいらっしゃるでしょう。

実際、その通りです。両者ともに営業部門の効率化を目指しており、そのために方法を模索し、実施していく活動のことと言えます。

しかし、Sales EnablementとSales Opsには決定的な違いがあります。施策の対象です。

Sales Enablementは、現場寄りの活動が中心と言えます。各営業マンが成果を出せるように環境を整え、教育なども行うという点では、営業マンに営業のテクニックを叩き込んでいますね。

ただ一方でSales Opsの方は、市場の予測や営業部門全体として、どう競合に勝つかという戦略を立てています。こちらは経営戦略などとも関わるので、営業部門だけでなく、社長や他部署との連携などの比重が高いです。

つまり、Sales Enablementは現場の個々人の効率化によって営業部門全体の効率化を目指しているのに対し、Sales Opsは営業部門全体の進むべき方向、取るべき戦略を定めることで営業部門の利益と効率の最大化を目指しているのです。

Sales EnablementとThe Modelとの融合性

The Modelはセールスフォース社が導入した「営業プロセスモデル」の一つで、社内のオペレーションを改善するために考えられました。

これはつまり営業プロセスをマーケティング部門、インサイドセールス部門、営業部門、カスタマーサクセス部門の4つに分割することで専門性を高め、業務の効率化を図ろうとする概念です。

B2B企業などで導入されれば、売り上げに貢献できるとされており、最近注目されている概念と言えるでしょう。詳しくは、The Modelsを取り上げた記事がありますので、そちらをお読みください。

そんなThe Modelですが、いくつかの懸念点があり、その一つが組織の細分化によって連携しにくくなるのではないかという点です。つまり、組織が細分化されることで、チーム間での仕事の引き継ぎが必要になることや、各チーム間での意思疎通が難しくなることなどが原因となり、全体として見た時に効率が落ちてしまうということが考えられるということです。

一方、セールスイネーブルメントの考え方を導入することで、意識的に他の部署、他のチームの情報を集め、コミュニケーションを行うことができます。セールスイネーブルメントはThe Modelsとの親和性が非常に高いと言えます。

Marketing Enablement(マーケティングイネーブルメント)

今回の記事ではセールスイネーブルメントについて解説してきましたが、実はマーケティング部門のためのマーケティングイネーブルメント(Marketing Enablement)という概念も登場しています。

こちらもセールスイネーブルメント同様に、継続的に売り上げを伸ばしていくために、マーケティング活動を効率化するための仕組み作りとその教育のことです。こちらはまだ関心が低いですが、セールスイネーブルメントと同じく今後の動向が気になるところです。

まとめ

今回はセールスイネーブルメントについて取り上げました。

海外でセールスイネーブルメントが注目されていることや、その重要性が少しでもご理解いただけたのなら幸いです。

私としては、日本社会全体での人手不足や、The Modelとの親和性を考えると、日本企業こそセールスイネーブルメントを導入する必要性があると感じています。

日本企業でも多くの企業ではCRMツールの導入などが進んでいると思われますが、それを一歩先まで進め、より詳細なデータ分析を行うなど、セールスイネーブルメントの要素を少しづつでも取り入れていくのはいかがでしょうか?

参考文献

https://product-senses.mazrica.com/senseslab/sales/sales-enablement

https://www.bigtincan.com/resources/a-very-brief-history-of-sales-enablement/

https://www.salesforce.com/resources/articles/what-is-sales-enablement/

https://note.com/nakatani_ssl/n/n791a6c27298e

https://satori.marketing/marketing-blog/the-model/

https://seismic.com/enablement-explainers/what-is-marketing-enablement/

https://www.magicmoment.jp/blog/why-marketing-needs-enablement/